第74回(公社)全日本鍼灸学会学術大会 名古屋大会において本学卒業生・教員・大学院生が表彰されました

2025年06月10日 社会貢献・研究

去る2025年5月30日(金)~6月1日(日)に名古屋市で第74回(公社)全日本鍼灸学会学術大会 名古屋大会が開催され、本学からは鍼灸系大学の中で最も多い16演題がエントリーされました。
また、本学鍼灸学科・卒業生(2期生)村橋昌樹さんが高木賞を受賞、本学鍼灸学科・松浦悠人助教が高木賞奨励賞を受賞、本学大学院・保健医療学研究科(博士前期課程)瀬戸井玲南さんが学生ポスター賞を受賞し、表彰されました。
おめでとうございます!

2024年 高木賞

タイトル

観察データを用いた慢性一次性筋骨格系疼痛に対する鍼治療効果の検討

著者

村橋 昌樹, 井畑 真太朗, 堀部 豪, 小内 愛, 山口 智

研究のポイント

❶これまでの研究では、慢性疼痛に対して電気なし鍼治療 (置鍼)よりも電気あり鍼治療(EA)の方が効果的とされており、そのエビデンス構築にはランダム化比較試験(RCT)が用いられていました。
❷RCTは背景因子をランダム化によって調整できる非常に信頼性の高い研究手法ですが、高齢者や併存疾患のある患者様が除外されるなど、特定の条件下で実施されることから実臨床を反映しにくいという課題があります。
❸本研究では、実臨床から得られた149名の慢性疼痛患者データを用い、傾向スコアマッチという技法を用いて背景因子を調整、等しい背景を持つ患者様をマッチさせて置鍼とEAの鎮痛効果を比較しました。
❹その結果、痛みの評価において両群とも臨床的に有効とされる値(VASで23mm)以上に痛みを減少させましたが、置鍼(VASで26mm)と比べてEA(VASで38mm)の方が有意にVASを減少させました。
❺本研究結果から、慢性疼痛の疼痛管理に置鍼、EAともに有用であるが、EAの方がより効果的な鎮痛を起こす可能性が示唆されました。

受賞者・村橋昌樹先生のコメント

授業式の様子

村橋さん(2014年卒)と櫻井理事長

私は東京有明医療大学で学び、卒業後は町の鍼灸院や病院で勤務しながら、多くの先輩方から学びを得て、鍼灸に対する考え方や熱い思いを勝手に受け継いできました。高木賞を賜るにあたり、これまでの道程でご指導くださった先生方に、心より感謝申し上げます。
「鍼灸とは何か」「我々に何がどこまでできるのか」を問い続けることは、鍼灸師としての責務だと感じています。明確な答えを持って臨床に臨み、患者様に還元できるよう、今後も質の高い臨床と研究に励んでまいります。
基礎を築かせていただいた東京有明医療大学の先生方との出会いと、貴重な学びの機会に深く感謝し、重ねて御礼申し上げます。

 

 

2024年 高木賞奨励賞

タイトル

Acupoints used in acupuncture-based randomized controlled trials for major depressive disorder: A systematic review. Japanese Acupuncture and Moxibustion

*日本語訳「うつ病に対する鍼治療のランダム化比較試験で使用された経穴のシステマティック・レビュー」

著者

MATSUURA Yuto, TANIGUCHI Hiroshi, KOGA Yoshihisa, YASUNO Fumiko,SAKAI Tomomi

研究のポイント

❶うつ病に対する抗うつ薬と鍼治療の併用は、抗うつ薬だけよりも症状を改善することが報告されています。しかし、鍼治療の方法にはばらつきが多いという課題があります。
❷「どの経穴を使うか」は、鍼治療の治療内容を決める重要な要素ですが、うつ病への鍼治療でどのような経穴がよく使われているかを調査した研究はありませんでした。
❸本研究では、うつ病に対する鍼治療の有効性を評価したランダム化比較試験の論文を収集し、治療に用いられた経穴を集計しました。
❹その結果、使用頻度の高い経穴が特定され、治療方法毎に使用経穴の傾向が異なることも示されました。
❺本研究結果は、うつ病患者に鍼治療をする際や研究計画の立案において、使用経穴を選択する際の資料となることが期待されます。

受賞者・松浦悠人助教のコメント

多くの先生方のご指導のおかげで高木賞奨励賞を受賞することができました。心より御礼申し上げます。本受賞論文は使用経穴を調べたシンプルなものですが、意外とヒントの多い論文になりました。少しでもうつ病の鍼灸治療に関わる臨床家や研究者のお役に立てれば嬉しいです。

 

 

2024年 学生ポスター賞

タイトル

月経痛に対する鍼治療の効果を検証するパイロットスタディ〜偽円皮鍼を用いた試み〜

著者

瀬戸井玲南,谷口授,谷口 博志

研究のポイント

❶ 今回、全日本鍼灸学会の学生ポスターで発表をしたのは、学部4年生で行なった卒業ゼミの研究です。月経痛に鍼灸治療の効果があると報告されていることから、それについて「実際に確認してみたい!」と思い、このテーマを選びました。
❷月経痛を有する学生2名を対象に、三陰交という経穴に実鍼(円皮鍼)か偽鍼(偽円皮鍼)を貼付し、その効果を検証しました。その結果、両参加者とも実鍼(円皮鍼)で月経痛や服薬の減少が確認され、月経痛に対して円皮鍼が有効である可能性を確認できました。
❸ しかしながら、参加者の都合で研究を最後まで行えなかったことや、実鍼と偽鍼のどちらを貼付しているかを参加者が気づくなど様々な課題もありました。これらの結果に対して、より良い研究にするために前向きな検討を行いました。
❹学会では、その思考プロセスをふまえ、自分はどの様に考えて問題解決を行おうとしているのかを発表しました。

受賞者・保健医療学研究科 瀬戸井玲南さんのコメント

この度は、全日本鍼灸学会の学生ポスターで優秀賞という栄誉ある賞をいただくことが出来ました。一緒に卒業ゼミを頑張った前村優朱さん、研究に関わっていただいた方、ご指導くださった先に深く感謝いたします。今回の研究から月経痛に対して鍼治療が有効だったことを示せたわけではありません。しかし、先生のアドバイスのもと、研究に挑戦し、その過程で出てきた疑問点や問題点について、自分なりに考察して発表しました。この研究プロセスを経験することで、「もう少し研究をしてみたい」と思い、現在は大学院生として大学に在籍しています。卒業ゼミで行なった今回の研究を、さらにブラッシュアップして行なっていく予定です。この研究で得たものを次に活かしたいと考えています。 

 

関連サイト

公益財団法人全日本鍼灸学会
https://jsam.jp/research/award2024/