鍼灸学科・矢嶌教授のプロトコル論文が『JMIR Research Protocols』に掲載されました。

2026年06月11日 社会貢献・研究

この度、本学鍼灸学科・矢嶌 裕義教授の研究計画論文(プロトコル論文)が、『JMIR Research Protocols』に掲載されました。

Effect of Acupuncture for Chronic Nonspecific Low Back Pain: Study Protocol for a Randomized Double-Blind, Placebo-Controlled Trial

(慢性非特異的腰痛に対する鍼治療の効果:ランダム化二重盲検プラセボ対照試験の研究計画書)

掲載誌

JMIR Research Protocols(JMIR Res Protoc 2026;15:e78713

著者

矢嶌 裕義高山 美歩高梨 知揚、田中 智大、奈須 守洋、山田 隆寛、平松 燿、Ted J. Kaptchuk、Judith M. Schlaeger、Jian Kong田中 滋城高倉 伸有

📝 ワンポイント解説

慢性非特異的腰痛:原因がはっきりと特定できない、長引く腰痛のことです。

研究計画論文(プロトコル論文):実験を始める前に「こういう方法で正しく効果を調べます」と宣言する論文のことです。今回はこの計画段階の論文になります。

本研究で使用している「二重盲検用プラセボ鍼」は、本学・髙倉伸有教授らが開発した技術であり、『National Geographic』米国本国版でも取り上げられた国際的に注目される革新的ツールです。この技術を用いた臨床試験として、本研究の計画段階での発表にも大きな意義があります。

研究のポイント

現代医学におけるレベルの研究手法に挑戦
鍼治療の効果を正しく証明するため、患者さんだけでなく、治療をする鍼灸師すらも「今、本物の鍼を刺しているのか、偽物の鍼なのか」が分からない特殊な二重盲検(にじゅうもうけん)の道具を使い、世界で最も厳密な方法で実験を行いました。

3つのグループに分けて効果を公平に比較
「本物の鍼を刺すグループ」「皮膚に触れるだけの偽物の鍼グループ」「皮膚にすら触れない偽物の鍼グループ」の3つに患者さんを分け、思い込みや期待感(プラセボ効果)に左右されない鍼を刺すことの効果を調べています。

「心の声である痛み(主観)」と「体を動かす変化(客観)」の両方で評価
患者さんが感じる「痛みの強さ(10段階の痛みのスケール)」だけでなく、おじぎをした時に腰の筋肉がリラックスするかどうかを、皮膚に貼るセンサー(筋電図)を使って科学的・客観的に測定しています。

2025年3月に実験が完了した最新の研究
2018年から約7年もの歳月をかけてじっくりとデータを集め、2025年3月にすべての実験を終えた、極めて信頼性の高い大規模な研究プロジェクトです。

💬 先生からのコメント

「鍼って本当に効くの?」という疑問に、科学の力で真正面から答える研究です。これまでの鍼の研究では、施術者が「今から本物を刺す」と分かってしまうため、それが態度に出て患者さんに伝わる恐れがありました。

今回は施術者すら騙す徹底ぶりで、鍼の本当の実力をあぶり出そうとしています。また、痛みの変化だけでなく、筋肉の電気信号という「体の証拠」を記録している点が画期的であります。鍼灸の未来を担う高校生にとっても、伝統医療が最先端の科学として証明されていくための最前線の研究方法といえます。

― 矢嶌 裕義 教授